不登校問題を考えよう【その2】 ~フリースクール「げんこつ」木村先生に聞きました~

不登校問題を考えよう【その2】 ~フリースクール「げんこつ」木村先生に聞きました~

2017年12月1日

不登校について考えよう【その1】」では、北越谷の『げんこつ』についてご紹介しました。
では、長年子どもたちを見てきた木村先生は、
昨今の不登校問題に対して、どんな思いを抱いているのでしょうか。
今回は、不登校について伺っていきます。

不登校問題を考えよう【その1】  北越谷『げんこつ』設立までの経緯と、『げんこつ』の紹介
今回 不登校問題を考えよう【その2】  不登校に対する考えと、子どもたちへの思い
不登校問題を考えよう【その3】  今の子どもたちが抱える問題と、子どもの成長に必要なもの
不登校問題を考えよう【その4】  今、悩める親たちに伝えたいこと

 

  ■NESげんこつ
げんこつ外観  1993年設立、NPO法人。
 フリースクールのほか、学童保育、放課後デイサービス、障害児学童保育、
 自立支援、ゼミナール、カウンセリングなども行っています。
 生活体験を重視した、新しい子育て支援施設です。
  
 越谷市北越谷1-23-1 オリーブハイツ101
 TEL:048-977-8996
                      ホームページ:http://www.gennkotu.net/

不登校に対する考えと、子どもたちへの思い

「この子たちは一体何なんだ!?」

1993年頃にバブルが弾けた時、日本の教育現場も子育て現場も、ガラッと変わりました。
それまでの「いじめ」というのは、「ワル」が「頭のいい子」をいじめていたんですが、
『新自由主義』(※)というものが入ってきて、「勉強のできる子」が「勉強のできない子」をいじめるというふうに変わりました。
そしてその頃から、不登校問題もクローズアップされてきました。
僕は遅刻ばっかりしてたけど学校が大好きだったから、最初「学校に行きたくない」って言う子どもの気持ちが全然分からなくて。
だから、『げんこつ』で初めて不登校の子どもに出会ったときは、
「どうしてこんなに心を固く閉ざしちゃってるのかなぁ」と思いました
僕はどっちかっていうと熱血派で、「こっち来いよ、一緒にやろうぜ」ってワーワーやって、
騒いだり泣いたり笑ったりしてる中で子どもが成長していくと思っていたんだけど、それがだんだん通じなくなってきちゃって。
その頃には、やっぱり全国の先生たちも、いままでの実践が通用しなくて困ったみたいでしたね。
僕もそれまでは、「子どもの事を知ってるのはオレだ!」って自負があったんだけど、
子どもたちに自分の思いが全く通じていかなくて、「この子たちは何なんだ、一体!?」っていう、
子どもの気持ちが分からなくなる苦しい時代がありました。
それから不登校の子どもの気持ちが分かるまでには、6年かかりました。
(※)新自由主義=
   政治や経済の分野で「新しい自由主義」を意味する思想や概念。
   新自由主義的な視点では全ての人類は自分自身を管理する起業者で、そう行動すべきとする。
   個人は起業家と同様に将来を含めた自己のステータスを最大化するために
   友人、趣味、スポーツ、配偶者などを選択するという長所の倫理である。  《Wikipediaより抜粋》

不登校は「怠け」ではない

木村先生  僕は、「不登校は怠けではない」と思っています。 
  学校って、常に子どもにとって生まれて初めてのことしかやらない場所でしょう。
 だから頭の中では、毎日大変なことが起こっているわけですよ。
 それは、できないことをできるようにすることで、言い換えるなら「チャレンジ」ってことになります。
 ちょっと自分の思い通りにできないと、「面倒くさい」「やりたくない」って腹を立てて叩いたりするのは、
 それはつまり「チャレンジ力がない」ってことなんです。
 じゃあ「チャレンジ力」のないお子さんはどうしたら良いか。
 「チャレンジ力」をつける体験をいっぱいさせてあげようってことです。
それは子どもたちの感覚と隣にあるようなものを使っての遊びで、
冒険の体験であったり、伝承遊びであったり、山登りであったり。
例えば伝承遊びのコマ回しなんかは、紐を巻くところから始まって、投げられるようになる、回せるようになる、
色んな技をできるようになるっていうところまで、できないことを毎日何百回もやって、やっとできるようになって、そして感動する。
(※『げんこつ』でのコマ回しの様子は、こちら♪)
山登りも、一度登り始めたら、一人で登るしかない。
くじけそうになって励まされて、でも頂上に着いて景色を見たら、美しさに感動して。
できなかったことが、何度も挑戦してやっとできるようになったっていう喜びは本当に格別で、
その時に、「人間、やればできるんだぜ」って言葉がじ~んと心にしみるわけですよ。
だから『げんこつ』では、学校の勉強ができないことは「怠け」ではなくて「チャレンジ力がない」って言うんです
『げんこつ』で言う「怠け」はどういうことかっていうと、できることをやらないこと。
のどが乾いたら自分で蛇口のところまで行って、水を飲むでしょう?
誰かに一言「水!」で終わらせるなんてしないですよね。

不登校は「適応障害」

子どもたちって、「親」と「場所」と「時代」は選べずに生まれてくるでしょ。
これを不条理って言って、社会っていうのは、生まれた瞬間から、暴力的に子どもたちに打ち寄せてくるものなんですね。
でもそういった社会にでも、否応なく適応していかなくてはいけないし、理屈抜きで身に付けなくてはいけないものもたくさんある。
その中の一つが「学校」という環境なんですね。
でも学校へ行ってみたけど、朝起きられなかったり、頭やおなかが痛くなったりっていう、健康じゃない状態になっていく。
それが「適応障害」で、適応障害は誰でもなるものなんです。
そう考えると、不登校に対する理解ができてくると思います。
それをどう克服するかについては、2つの道があります。
一つは、環境を変えること
例えば、学校の教育を変える、別の場所へ移る、といった、ストレス源をなくす方法ですね。
もう一つは、適応できる自分になっていくこと
僕はこの両方ともが必要だなと思っています。
学校が合わないのであれば、環境を変えるという選択も有りだとは思います。
ただし親はその時に、行くにしろ行かないにしろ、学校という場所にアレルギーを起こさないようにしてあげないといけないし、
子どもの側も、「学校は自分には合わない場所だけど、
その中で学んでいることや、コミュニケーションの力は必要なものなんだ」という考えを無くしてはいけないですね。

不登校と障害の問題

不登校につながる障がいには2つあって、まず1つは先天性の障害です。
先天性の障害の中には、ADHD(注意欠如/多動性障害)、学習障害というような発達障害があって、
その場合は外見からは分かりませんから、なかなか理解してもらうことが難しく、
集団の中から排除されていくようになり、やがて不登校につながっていくことがあります。
今『げんこつ』にいる生徒79人中、48人が障がいを持っているんですが、
その中には学校生活では怒られてばかりで、集団生活から追いやられ、
自尊感情が下がってしまったというお子さんも多くいます。
もう一つは、精神障害です。
最近、精神科医が不登校の子どもたちに対して、「統合失調症」という診断をしがちな傾向があります。
僕はそんなに簡単に統合失調症ってなるものじゃないと思っているんだけど、
学校へ行かなくなったことで、ふさぎがちになり自己効力感も低くなっていけば、当然精神面での色んな症状が出てくるでしょう。
そこで病気だという診断をされて、いろいろなことをそのせいにすると、本人はとても楽になるんですね。
出された薬に依存して、「病気だから私はこれができないんだ」ということを続けていく子どもも出てくるという、
とても悲しいことが起こるわけです。
こういった不登校と障がいの問題の根底には、自分と同質のものしか認めない「異端の排除」という考えが、
最も大きな原因として流れている
と思っています。

 

不登校問題を考えよう【その3】」では、
今の子どもたちの抱える問題点と、子どもの成長に必要なものは何なのかについて、
引き続き木村先生のお話を伺っていきます。

(2017年12月 byクワイエメンバー ゆきだるま、Sakiko、fika)

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