悲しみとの向き合いかた~「グリーフケア」を知っていますか?~

悲しみとの向き合いかた~「グリーフケア」を知っていますか?~

2016年3月1日

ある日突然、大きな悲しみを背負った時、どうしますか―――?
子育て真っ盛りの今ですが、親の老いや看取りは、いつか必ずやってくることですね。
また、お子さんが大好きなペットを亡くす、親御さんを亡くされた友人に出会う、流産を経験するなど、
悲しい思いというのは、いつどんなふうにやってくるか、誰にも予想がつきません。

今回は、あまり考えたくない、でも避けて通れない、そんな大きな壁に行き当たった時、
手を差し伸べてくれるボランティア団体「グリーフサポート埼玉」を訪ね、
代表の内田登和子さん、副代表の秋山久美恵さんのお二人に、色々な質問を伺ってみました。

 ■グリーフサポート埼玉(埼玉・生と死を考える会)

 「分かち合いの会」を開催しているスタッフが、
 さらに多くの方達の参加できる場、生と死を考える機会を提供できる場が
 必要であるとの強い想いから、2015年2月に立ち上げた会です。
 また、この会は、関連する他の団体とつながりを持ち、
 様々なグリーフを抱えた方や学びたい方のニーズに応えていきたいと考えています。
 そして、お互いの気持ちを尊重し、寄り添い支え合う地域社会づくりを目指しています。
 麗澤大学名誉教授・水野治太郎先生を顧問とし、
 現在ボランティア18名(うち女性17名)で活動中。
 ◆Facebookページ   https://www.facebook.com/griefsupportsaitama/
 ◆【提携団体】NPO法人千葉県東葛地区 生と死を考える会ホームページ
                     http://www.geocities.jp/chiba_tokatsu/     

「グリーフ」とは何ですか?

 ◆「グリーフ」とは◆  (※グリーフサポート埼玉 リーフレットより転記)
 人は喪失を経験すると、否応なく、喪失以前とは違う人生を歩むことになります。
 悲嘆、呆然自失、怒り、自責感、絶望、苦悩、心痛、身体の不調、
 精神的危機、愛惜など…グリーフはひとそれぞれです。
 大切な人やものを喪失した時の心身のこのような状態を、グリーフと私たちは考えています。

グリーフと一言で言っても、その範囲は大変広いものです。
誰かを亡くしたときはもちろんのこと、「喪失」という体験は、全て「グリーフ」になります
例えば、子育てに伴って仕事を辞めなければならないという体験も、
「仕事を失う」というグリーフの体験になります。
またお子さんにとっての「転校」は、それまでの大切な友達・場所との別れというグリーフになります。
介護を受けている方は、それまでの誰の助けも要らない生活から一変した、
「健康の喪失」というグリーフを抱えていることになりますし、
一方介護をする側の方は、介護による「自分の時間の喪失」、
それによって仕事を辞めなければならなかった場合は「仕事の喪失」などのグリーフを抱えることになります。
そう考えると、グリーフというのは、誰にでもあること、起こりうることなのです。
但し、一つの同じ喪失を、どう受け止め感じるか、どんな症状が出るかは千差万別です。
例えば、子育てで自分の時間がなくなる、という喪失もグリーフですが、
その中で気持ちを転換して、子育てで新たな生きがいを見い出し、
喪失したものに対する悲しみをあまり感じない方もいますし、
今まで通りできないことに、とても辛さを感じる方もいます。
一口にグリーフと言っても、本当に人それぞれなのです。
また、グリーフを抱えることはマイナスばかりではありません
グリーフの経験が、それまで気づかなかったことに気づかされたり、学びに繋がることもあり、
新たな生きる力や回復力(レジリエンス)をもたらしたり、強めることがあります。
大切な人はもう亡くなってしまったけれど、その人からの贈り物のようなメッセージを感じ取って、
自分が見守られている安心感を得られるという、プラスの点もあるのです。

グリーフケアは、どのように行われるのですか?

赤と黒の椅子 前述の通り、グリーフというのは人それぞれですから、
 「こうしたら全てが解決する」といった方法はありません。
 実際、専門家の博士・先生方の説も、様々なものがあります。
 私たちは専門的な研修を受けたグリーフカウンセラーですが(現在7名が在籍)、
 傷ついている方たちに接するというのは、
 一つの言葉かけで更に辛い思いをさせてしまうなど、とても危険なことを含んでいますので、
 まずグリーフの基礎から学び、必ず毎回各個人のスキルの確認を行っています。
普通のカウンセラーと違うのは、
相手に対して「こうすればいいですよ」というような、指導をするということがない点です。
同じ方でも、その時々で色々な思いがありますので、それを丁寧に聞いていき、
その方に「寄り添う」ということを心がけています。
他の人に話すということで、自分の中で次第に心が整理されていきますので、
隠されている感情を出すことのできる場を作って、自分で気付くということが一番大切ですね。
その上での相乗効果として挙げるならば、
似たような苦しみを抱えた人と分かち合うということが、
大変その人自身を癒し、力を与えてくれるものになります

そういった場を設けるために、私たちは定期的に「わかちあいの会」を行っています。
自分が話をするだけでなく、同じ場に集まり、他の人たちの話を聞くということで、
自分の別な面を見つけることができたり、それが糸口や光を見つけられるきっかけにもなります。
この「わかちあいの会」では、「泣いてもいいんですよ」、「話したくなった時に話してくれればいいんですよ」、
「あなたはここにいていいんですよ」、そして「私たちはそれに寄り添います」というメッセージを送るだけで、
私たちカウンセラーがその人の変化に対して、何かをしてあげられるわけではありません。
私たちはただ、世の中の「正義」や「倫理」や「常識」などを取り払って、
「今ここにいる、あなたのありのままを全て受け入れます」という姿勢を持って、
そばで寄り添って支えているだけなのです。
自分のことを話したり、他の人の体験を聞く中で、その方は自分で自分をケアしていくのです。

グリーフに強くなる方法はありますか。また自分がグリーフを抱えた時、どうしたら良いですか。

グリーフというのは、自然で当たり前なことですので、
それに対して「強くなる」や「弱いか強いか」などはないのです。
悲しいものは悲しいのですから、それは自然なことなのです。
たとえ前もって勉強をして備えていたとしても、起こってしまったらどうにもならないものです。
逆に抑え込んで我慢をしたりすると、別の症状が出てきたりもします。
ただ、「グリーフというものがある、それは自然なことだ」と知っておくだけで、
大きな心の準備にはなると思います。
また、普段から触れ合いを大切にして、
心をこめて相手と付き合う、ということを心がけるのも良いですね。
そしてグリーフを抱えてしまった時には、
私どものようなグリーフケアセンターへ行くのも一つの方法ですし、
また、同じ思いを共有できる「仲間作り」というのがとても大事だと思います。
「自分と同じような経験をしている人がいる」と気がつくだけで、大きな力になることがあります。
「一人ぼっちにならない」ということが大切ですね。
病気の看病や介護中の方たちも、やはり同じ境遇の方たちと話すことが良いですね。
介護施設などで、介護中の方たちの話し合いの場が設けられている場合が多いので、
そういった場所に行き、孤立しないということが大切です。

グリーフを体験した人に接する時、どうしたら良いのでしょうか。

夕焼けの電車 周りにいる人たちは、「どう接していいか分からない」、「傷つけてはいけない」という思いから、
 距離を置いてしまったり、遠慮してしまったりしますね。
 ですが、黙って距離を置かれるというのは、ますますその人に孤独を抱えさせ、
 周りの方との間にまた、二重のグリーフを抱えさせることにもなります。
 そんな時は、「私にできることはないかしら、分からないから教えてほしい」という一言をかけてほしいですね。
 その方がどうしてほしいかというのは、その方にしか分からないことですが、
 でもその一言によって、「あなたのことをちゃんと見ていますよ」というメッセージが伝わり、
もしその時、その方がしてほしいことがなくても、
「何かをしてあげよう」と思ってくれている人がそばにいる、ということは伝わります
そうすると、いざ相手の方が話したいと思った時にも、とても話しやすいですね。
また、グリーフを抱え、攻撃的になる方もいらっしゃいます。
(同居していた遺族に「なぜ近くにいて、具合が悪いのが分からなかったのか」と詰め寄る、など。)
そういった場合は、その方自身もグリーフを抱えていますので、
その行動の「良い、悪い」という評価ではなく、「その人は何が辛かったのか」を話せるような、
その人の気持ちを受け止めてあげられる場があると良いですね。
自分の人間関係とは離れた人たちの中で話をすると、それまでとは違う捉え方ができ、
誰かを責めることから視点を変えるヒントを得られるかもしれません。
また、グリーフを受けている人への言葉として、善意でかけてしまうのが、
「がんばって」や「時間がたてば元気になるよ」といった言葉ですね。
とても大切な人というのは、いつまでも忘れたくないものです。
「早く忘れなさい」と言われているような言葉は、相手の方にとってはとても辛いですね。
また、2年3年と月日が経ってから、「まだそんなことで悲しんでいるの」と言われるのも辛いことです。
年月が経てば悲しみ方は変わりますが、辛い気持ちに変わりはないのですから。
私たちは、周りの方たちにも、
そういった「善意からくる言葉で傷つくこともあるのだ」ということに気がついて頂きたい、という思いで、
グリーフに関する講演会や「デスカフェ」などを、企画・開催しています。

グリーフを抱えたお子さんには、どう接したら良いのでしょうか。

地面にお絵かき小さなお子さんと言えど気持ちは複雑で、3、4歳のお子さんでも、
大人の気持ちを感じて、「このことを言ったら、お母さんが悲しむから言わない」、
「これはきっとみんなに言ってはいけないことなんだろう」と、小さい気持ちの中で考えます。
死別や離婚などで、グリーフを抱えたお子さんに接する時は、
今までどおりに接してあげる、というのを心がけて頂けると良いですね。
腫れものに触るようにすると、かえって辛い思いをさせてしまいます。
そして「困ったことがあったら、いつでも話してね」と一言メッセージを伝えてください。
その後は、そのお子さんが発信してくれるのを待つしかないのですが、
その保護者の方へ、「子どもグリーフサポート」などの情報を提供してあげるのも良いですね。

「子どもグリーフサポート」について

 ■子どもグリーフサポートの集い
 病気、事故、自死などでお父さんお母さん、祖父母、兄弟や友達など、
 大切な人を亡くした小学生の子どもたちが同じ時間を過ごします。
 【開催日】2ヶ月に1回 第1日曜日
 【時間】13:30~16:00
 【場所】柏グリーフケア・センター 南柏会館5F・7F
 【電話】04-7141-2440  ※事前申し込みが必要です

大好きな人を亡くして、「悲しい」「苦しい」と思うことは自然なことです。
私たちの側からは、それに対して先回りをして「悲しいだろうから」「苦しいだろうから」という
固まった状態で接することはせず、ごく自然に接します。
根掘り葉掘り聞いたりはしませんが、でもそのお子さんが話したくなったら話してもらいます。
そして自然にふるまってもらいます
一般社会では、「親御さんを亡くしたお子さんだ」ということで、
距離を置かれたり、話題をあえて避けられたりという、がんじがらめの状態で過ごしています。
また、一方の親が亡くなってしまった場合、もう一人の親までいなくなってしまわないだろうかという不安で、
「良い子にしよう」「がんばろう」と、小さいながら思って日々生活しています。
でもこの集いの場では、そういった緊張は必要ありません。
お子さんは親御さんから離れて、ファシリテーターと一緒に、
体をたくさん使って、ありのままに自分の好きなように遊びます。
その後、亡くした人について話したり、物を作ったりという「静」の時間を持ちます。
亡くなった方についての話題を、避けるようなこともしません
一度来られると、「自分を出せる場所がある」ということで、何度も継続して来られるお子さんが多いです。

普段から子どもへ、グリーフに関して教えておける事はありますか。

広い海 ペットを飼うことや、命をテーマにした絵本を親子で読むことで、
 生命に対して一緒に喜んだり悲しんだりするという、
 グリーフについての語り合う、受けとめ合うきっかけを持つことができますね。
 また、お子さんがある程度大きくなり理解ができるようになったら、
 「親もいつかは亡くなる、一緒にいられる時間には限りある」ということを、きちんと伝えるのも良いでしょう。
 最近は、「老い」というのを良くないもの、無いものとしている傾向がありますが、
 親が少しずつ自分の老いや弱い部分も見せて、自然に「助けて」と言える環境を作ることも大事です。
それは、「弱い面を見せたら恥ずかしい」「心配をかけてしまう」という気持ちを軽減させ、
お子さんが万一、いじめなどの困った状況に置かれた時に、
一人で抱え込まず、すぐに助けを求めることができる、ということにも繋がります。
親は子どもの前ではどうしてもがんばってしまいますが、いい意味での心配をかける、ということですね。

介護疲れや様々な確執などで、故人に対して悲しい感情が湧いてこなかったり、
 ホッとした気持ちになり、誰にも相談できない方もいますが…

「こう思わないといけない」「その感情を持つのは悪いことだ」ということはなく、
その方がそう感じているということは、もうしょうがないことなのです。
感情というものに正解はないのですから。
「ホッとした」という中には、やり切ったという満足感があるのかもしれません。
お葬式で涙が出なかったということがありますが、悲し過ぎる場合は、涙も出て来ない時があります。
また、それ以外でも色々な問題を抱えていて、悲しんでいる場合ではなかった、ということもあります。
(例えば、旦那様が亡くなったが、小さいお子さんを抱えて、今後の生活のことの方が心配だった、など。)
また、グリーフはすぐに出てくると決まったものではなく
数年経って出てくる場合もありますし、10年以上経ってから何かの拍子に涙が出て、
長い間、自分の中のグリーフが解決されていなかったことに気がつく方もいらっしゃいます。
今、その方の感じている感情は、「今の自分の中での正解」なんです。
その思いがこの先ずっと続くかは、そのご本人にも分かりません。
でも「これが今の私の思いなんだ」と身を任せることも必要です。
その人の苦しみというのは、その時、その立場にならないと分かりませんし、
その人本人ですら、分からないこともあるのです。

グリーフサポート埼玉から

昨年出来たばかりのサポートグループです。
サポートを必要としている方々がたくさんいます。
私たちの活動が広がり継続できるように、皆さんの認知と応援をよろしくお願いします。

 ■グリーフサポート埼玉 (埼玉・生と死を考える会)
 【メール】griefkoshigaya@yahoo.co.jp
 【電話】080-3083-0024 (留守電にメッセージをお入れください)
 Facebookページ https://www.facebook.com/griefsupportsaitama/
 ~わかちあいの会~ (無料・予約不要)
 大切な人を亡くされて、悲しみや苦しみをひとりで抱えていませんか?
 同じような悲嘆を抱えている人がいます。
 ありのままの自分の素直な気持ちを表現できていますか?
 お互いの気持ちを尊重し、一緒に語り合い、安心して同じ時間をすごせる場が
 「わかちあいの会」です。
 年齢や性別、お住まいの場所は問わず、どなたでも参加いただけます。
 【日時】毎月第4日曜日(12月は第3日曜日) 13:30~15:30
 【場所】越谷サンシティ 会議室(室番は当日受付にてご確認ください)

 

今回は、子育てとは対極にある、グリーフケアを取材しました。
昨今、毎日のように起こる悲しい事件・事故を耳にするたびに、
ずっと「大切な人が亡くなってしまったら、一体どうしたらいいのだろう」という漠然とした不安があり、
死や老いに対して、考えないようにしていたというのが正直なところでした。
ですが、内田さんと秋山さんの優しい語り口と、思いやりに包まれた一言一言に、
グリーフはごく自然な感情で、マイナス点ばかりではないのだと知り、不安な気持ちが軽くなった気がします。
また、「同じ境遇の人たちと話す、話を聞く」という、人としての基本的な触れ合いが、
グリーフを癒す大きな効果を持っているということが、とても大きな気付きでした。
今、悲しい気持ちに押しつぶされそうな方には、ぜひグリーフケアを受けてみて頂きたいと思いました。(fika)

(2016年2月 byクワイエメンバー fika)

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